建築設備の定期検査内容について
対象となる建築設備とは?どんな検査を実施するのか?
建築設備定期報告の対象となっている場合、機械換気設備、機械排煙設備、非常用の照明装置のうち、建物にどんな建築設備が設置されていて、どれが検査対象となるのか判断しなければなりません。
※大阪府下をはじめ関西圏では、定期検査の対象となる建築設備は、上記3種類のところが多いですが、特定行政庁によっては「給水設備及び排水設備」が対象となっているところもありますので、案内通知の内容をご確認ください。
定期検査の対象となる建築設備とは
大阪府の場合、検査対象として指定されている建築設備は3種類です。
1.機械換気設備
A. 換気に有効な窓がない居室(無窓の居室)がある場合、設置されている換気設備(換気扇等)
を検査しなければなりません。
B. 劇場や映画館の居室の換気設備も定期検査の対象です。
C. 火を使う設備機器を設けた部屋(火気使用室)も定期検査の対象です。
ガス又は石油による燃焼機器を設けた部屋はすべて対象となります。
※(IH機器等の電気機器は対象外です。)
設置機器の発熱量等から必要換気量を計算し、実際の測定結果と比較します。
ガス機器等の燃焼機器を使う居室では、空気中の酸素濃度が下がりますので、きちんと換気されていない状態で長時間の作業等を行うのは危険です。そのようなことがないように、十分な換気を強制的に行うための機械換気設備が設置されています。
また、必要な開口面積以上の窓のない居室(無窓の居室)も同様に、使用上想定される室内にいる人数に対して、必要換気量が不足してはいけませんので、その部屋の利用状況にあった規模の換気設備を設置する必要があります。
2.機械排煙設備
500m2を超える建築物には、ほとんどの場合、排煙設備が必要となってきます。外気に面しているところでは自然排煙設備(排煙窓)が設置されています。火災発生時にその窓を開放することで煙を外へ逃がします。
規模の大きい建物や地下がある建物では、機械排煙設備が設置されていることが比較的多くなります。(※地下に居室があっても「ドライエリア」を設け自然排煙窓で排煙する場合もあります。)ホテルや病院などでは、客室や病室を外気に面する建物の外側へ配置する設計が多く、廊下や中央の共有スペースの排煙を機械排煙で処理しています。その為、天井や壁面(上部)に排煙口が設置されています。
毎年の定期検査が必要なのは「機械排煙設備」です。自然排煙設備(排煙窓)については、特定建築物(3年に1回)の定期調査の際にチェックすることとなっています。
機械排煙設備が設置されている場合、各部屋や共用部にある排煙口の風速・風量測定を行います。煙を外気に放出させる排煙出口(排煙機本体)でも風速・風量測定を実施します。各所に設けられた排煙口の風量測定は、3年で全数の検査を行えば良いこととなっており、毎回全数チェックできない場合の緩和措置が採られています。ただし、排煙出口(排煙機本体)は毎年必ず測定しなければなりません。
3.非常用の照明装置
法的に設置が義務付けられている非常用照明の点灯状況を確認・検査します。
特定建築物の定期調査でも、非常用照明の点灯確認を実施しますが、建築設備の検査では、「照度」測定などのより詳細な検査を行わなければなりません。
非常用照明器具のバッテリー(蓄電池)については、内蔵型と別置き型があります。
内蔵型は、個々の照明器具の中にバッテリーが入っており、各所の器具それぞれが個別に、常時充電された状態となっています。一方、バッテリー別置き型は、各所の照明器具の中にバッテリーはなく、機械室に大きな蓄電設備が置かれており、非常時にはそこから各所の非常用照明に電気を送る仕組みとなっています。
※兵庫県の建築設備定期検査では、バッテリー別置き型のみが定期検査の対象になっています。その為、内蔵型は特定建築物調査での点検のみとなります。
非常用照明の光源の種類としましては、白熱灯・蛍光灯・その他(LED灯)があり、避難経路の床面において白熱灯は1lux(ルクス)以上、蛍光灯・LED灯は2lux(ルクス)以上の照度が必要です。
また、一般電源が失われた場合に、非常用照明は予備電源で30分以上点灯することが求められます。経年で性能が落ちてきた器具のバッテリーや電球・蛍光管は、定期的に交換・メンテナンスしなければなりません。
災害時に命にかかわる大切な建築設備
建築設備の目的
定期報告が必要な設備は、一般の方にとって普段あまり気にしないものばかりかもしれません。
しかし、火災などの万が一の災害時には、これらの設備がちゃんと作動するかどうかで、人命にかかわる大切な設備になります。
例えば、2008年に大阪難波の個室ビデオ店での悲惨な火災事故がありましたが、火災時多くの人が煙によって死亡しています。排煙設備がしっかり機能すれば煙を外へ逃がし、避難できる時間を稼いでくれます。また火災により照明の電源が失われても非常用照明が点灯してくれれば、避難経路を安全に避難するだけの明かりを確保してくれます。
また換気についても、燃焼機器を使用する部屋で換気が不十分であれば一酸化炭素中毒の危険性が高まります。よく見かけるのが、換気設備のない狭いスペースに瞬間湯沸器等を設置しているケースです。建物を利用する中で、換気設備の必要性を考慮せず設置してしまっています。ガス機器を追加する場合は、換気設備があるか、設置されている換気設備で換気量が足りるのかといったことを確認する必要があります。施工会社や建築士と十分に検討が必要です。
万が一の時に命にかかわる為、建築基準法や関係法規で設置の条件等が様々定められています。いざという時に大切な設備がちゃんと機能するかを定期的に検査しておく必要があるというわけです。
実際に建築設備の定期検査を実施する際は、対象設備が設置されている場所に入室いたしますので、共用部はもちろん、居室や調理室(厨房)などにも立ち入りの必要が出てきます。営業時間や施設の運営状況等を考慮させていただき、検査日時のお打合せ・ご相談をさせて頂いております。