老人ホーム等の福祉施設、サービス付き高齢者向け住宅の定期報告について
対象となるのは避難困難者が就寝の用に供する福祉施設
平成28年6月施行の法改正で、国が全国一律に定期報告の対象となる建物の用途や規模を政令で定めました。これまでは各地域の実情にあわせて特定行政庁単位で定めていたため、地域によって大きなばらつきがありました。
今回の改正では、政令ですべての用途について定めることになったのではなく、近年の火災事故等の被害報告を受けて、特に避難上の安全確保で重要となる用途について一定の基準を定めた格好になります。
政令で指定する対象建築物の考え方
政令で指定する対象建築物の考え方は大きく2点です。
1.不特定多数の人が利用する
不特定多数の人が利用することが、この定期報告の対象となる建築物の大前提です。
2.高齢者等の自力避難困難者が「就寝」の用途で利用する
利用者が高齢者や障がい者、妊産婦など、火災時の避難に時間がかかると考えられる状態であり、就寝時に火災発生に気づくのが遅れることに配慮して、定期報告の対象に指定することとなった。(※就寝用福祉施設として、各種福祉施設やサ高住、助産施設などがまとめられています。)
上記の中で、建築基準法上の「児童福祉施設等」に含まれる有料老人ホームやグループホーム等の福祉施設、また建築基準法上の「共同住宅」に含まれるサービス付き高齢者向け住宅では、以下の3つのうちどれかに当てはまれば定期報告の対象となります。
1.3階以上に用途がある
2.その用途に使用している2フロアの床面積合計が300m2以上
3.地下にその用途がある
特に弊社がこの定期報告業務を行なうにあたり力を入れている用途が、老人ホーム等の福祉施設になります。また近年では、平成23年10月から「高齢者住まい法」の改正によりスタートした「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」にも対応しております。
弊社が、福祉施設の用途を重要視する理由
なぜ弊社が老人ホーム等の福祉施設の用途を重要視しているのかといいますと、この定期報告制度の目的や趣旨が最も反映される用途であるからと思うからです。
各地で起きた火災死亡事故等を見ると、高齢者の方の被害が後を絶ちません。まず第一に火災等の万が一の災害を予防することが大切なのは言うまでもありません。しかし、どれだけ予防しても様々な要因で、それでも起きてしまいます。その時に、建築基準法や消防法で定められた基準が守られ、防火設備等が適切に機能すれば、安全に避難する時間を確保し、被害の拡大を防ぐことができます。
施設で一生懸命働くスタッフの方たちも、知らず知らずに防火設備の閉鎖の支障となるところに物品を置いたり、排煙窓のオペレーターをふさぐ形で棚を置いてしまったりするケースがよくあります。また非常用照明などの普段点灯させない器具は、誰も気付かないままバッテリー切れで、いざという時に点灯しないといったこともあります。
こういったケースも弊社が定期調査・定期検査時に指摘することで未然に改善することができ、施設のスタッフの方たちの防災意識向上にもつながっています。高齢者や障がい者の方が生活する建物だからこそ、安心して暮らせるようにきちんとした定期点検とメンテナンスが大切だと考えています。また、そういった姿勢が施設の信頼につながると考えています。
弊社の定期報告に対するスタンス
お問い合わせいただく中で、「簡単でいいんで、とにかく安く見積もってほしい」「報告書を出すだけでいいから安くしてくれ」といったことを言われることがあります。こういった場合は、弊社の定期報告に対するスタンスと合わないためお断りする場合があります。高飛車なように思われるかもしれませんが、これではせっかく費用をかけて調査する意味がありません。何の為に建物の定期点検をするのか、それは入居者様はもちろんスタッフの方を含め、建物を利用する方々の安全の為です。違法な状態や不適切な管理状態で、万が一大きな事故が起きた場合には、建物の所有者・管理者様の責任問題にも発展してしまいます。
そのようなことがないように、適正価格でしっかり調査・検査させていただくことが我々の役割だと思っています。もちろん、その費用も出来る限り各建物毎の状況や希望等に合わせる形でお受けしております。
弊社は決して大きな会社ではありませんが、18年前の設立当初から定期報告業務に力を入れ、ホームページ上で率先して情報提供を行ってまいりました。現在は大阪を中心に関西圏の定期報告を行なう定期報告専門の一級建築士事務所です。近年は特に、老人ホーム等の福祉施設の定期報告を多く行っております。
有料老人ホームや介護老人保健施設、グループホーム、障がい者福祉施設、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の建物所有者様・管理者様、定期報告の通知が届きましたら、一度弊社にご相談下さい。
大阪府下の場合、防火設備の定期検査が平成29年度より始まり、以前からある特定建築物の定期調査、建築設備の定期検査も合わせると、令和2年度は3種類の定期報告を実施しなければならないという建物もございます。(※防火設備検査は「随時閉鎖式」の防火設備のみが対象の為、定期報告の対象から外れるケースもあります。)
検査済証を取得している新しい建物では、初回の定期報告が免除になったり、自身の建物が今年度どの報告をしなければならないのか、わからないことも多いかと思います。制度の内容も複雑になっていることもあり、ご担当者の方も混乱してしまいかねません。
お問い合わせページから、相談・見積が可能ですので、一度お問い合わせ下さい。